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IFA業界事情

成功するIFAのセルフマネジメント

米田メソッド(第6回)
資産形成を成功に導く黄金律(1)

画像:米田 隆 氏
早稲田大学 商学学術院
ビジネス・ファイナンス研究センター
上級研究員(研究院教授)
米田 隆 氏

1981年早稲田大学法学部卒業後1981年(株)日本興業銀行入行
1991年GLA設立、代表取締役就任、1999年PWM日本証券株式(旧LPL日本証券)会社代表取締役、2007年GLA代表復帰
公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング教育委員会委員長
2017年12月より常勤にて現職就任

今回と次回の2回に分けて、資産形成を成功に導く黄金律について、私のIFAとしての経験を共有させていただきたいと思います。
資産形成期に於ける運用を成功に導くには、次の8つの要素を含む投資の黄金律に従い、少なくとも10年、できれば15年継続していただくことが大切です。投資経験のない投資家は、どうしても短期での成果が気になり、投資継続ができないこともあります。それ故、下げ相場でのコミュニケーションが大切です。しかし、正しいプロセスで顧客の投資戦略を整合性のとれた形で関係を構築していなければ、顧客は投資を継続することはできません。その典型的なケースが、短期性資金で長期投資戦略を顧客に強いているような場合です。以下、正しい投資プロセスと8つの黄金律を構成する投資要素を記述したいと思います。

●8つの黄金律

(1)明確な投資目的
(2)長期投資可能資金の確認
(3)積立投資を行う
(4)分散投資を行う
(5)長期投資を行う
(6)必要な見直しを行う
(7)長期投資に耐える投資信託の選択
(8)長期資産形成の伴走者を持つ

(1)明確な投資目的

明確な投資目的がなければ、投資の成功の前提条件である、長期で一貫した方針に基づく投資戦略が実行できません。今月からできるにもかかわらず「来月から始めよう」と言っている投資家は、将来にわたって決して実行できないと伝えることが重要です。

所得の二極化が職業的能力と高齢化でより加速化する中、誰もが所得で勝ち組に入ることはできません。しかし、若いうちから時間を味方につけて毎月投資することで、資産運用では成功することができます。所得というフローで負け組となった時、助けてくれる保険商品はありませんが、資産形成期の運用では必ず勝ち組となる投資戦略があることを伝えれば、お客さまは最初の一歩を踏み出す勇気を持ってくれるでしょう。成功するIFAになるには、資産形成での運用の成功者として自らの経験も踏まえて顧客の背中を押してあげることが必要です。

(2)長期投資可能資金の確認

資産形成期の投資は、少なくとも10年超の長期投資をしない限り、確固たる成果には繋がりません。それ故、まずは長期投資可能資金の客観的把握が必要となります。その為には、まずストック性の資金とフロー性の資金の両面から長期投資可能資金をあぶり出す必要があります。預金の本来の目的は、流動性の保全です。その必要額以上に資金が預金に滞留していれば、その資金は働いていないという事を示しています。

あらかじめ預金で確保すべき2つの資金のうち1つは、失業や大病といった臨時の偶発的な状況に対処する為の緊急資金枠です。要は、経常収支の悪化に備え、準備費として蓄えておく財産で、米国ではEmergency reserveと呼び、通常は月額給与の3ヶ月分を目途に、預金や預金に類似した高い流動性を持つMRF等で運用します。
ただし、レイオフ(一時解雇)があるから簡単に採用を行う米国に対して、日本では一旦失職すると、正規従業員としての仕事は簡単には見つかりません。それ故、米国より長い6ヶ月分の生活費の確保が必要です。また、自営業者の場合、雇用労働者のように大病で入院した場合の休業保障がないので、やはり6ヶ月分の備えが必要となります。
なお、現在は医療が発達し、相当な大手術でも多くの場合3ヶ月程度で退院できます。もし、あなたが大病で6ヶ月以上退院できないということは、あなたのライフスタイルコスト(=固定性の経費)を抜本的に見直す必要があり、もはや予備費で対応不可能な状況を示しています。

この6ヶ月分の生活費を計算する際には、少し工夫が必要です。まず、1年に1度支払う税金や自動車の保険、また、ボーナス時に割増して返済している住宅ローンの元利払いも一旦は12ヶ月で割り戻し、月次換算した上で月次生活費を算出する必要があります。仮にこれを40万円とすれば、その6ヶ月分の240万円が予備費枠として預金で運用すべき資金となります。
もう一方で、5年以内に予定されている大きな耐久消費財(車など)の購入や大学の入学資金等、生活費以外の大型支出の手当も必要です。5年以内の予定支出が決まっている資金は、株式等の短期変動に耐えられないため、元本損失リスクを回避する為にも長期投資可能資金から除外します。仮に、これを300万円としましょう。
顧客の預金が現在1000万円あれば、以上の2つの資金、合計540万円を除いた460万円が長期投資可能資金となります。
一方、フローの資金も長期投資可能となります。具体的には、月次の手取り給与から前述の定義に基づく月次生活費を控除した資金余剰の70%を目途とするのが良いでしょう。仮に、手取給与が60万円で月次生活費が40万円なら、その差額の20万円の70%分、14万円が毎月ドルコスト平均法で投資可能な資金となります。
ボーナス時に余裕資金があれば、あなたへのご褒美への支出以外は、将来の経済的自由の為に長期投資資金に充当しましょう。これが、私が通常行っている長期投資可能資金把握のプロセスです。なお、ストック性の資金にも底だまりが起きますので、数年ごとの見直しが必要となります。

(次回に続く)

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