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IFA業界事情

成功するIFAのセルフマネジメント

米田メソッド(第8回)
“100歳リスク”時代をIFAとして幸せに生きる方法(1)

画像:米田 隆 氏
早稲田大学 商学学術院
ビジネス・ファイナンス研究センター
上級研究員(研究院教授)
米田 隆 氏

1981年早稲田大学法学部卒業後1981年(株)日本興業銀行入行
1991年GLA設立、代表取締役就任、1999年PWM日本証券株式(旧LPL日本証券)会社代表取締役、2007年GLA代表復帰
公益社団法人日本証券アナリスト協会プライベートバンキング教育委員会委員長
2017年12月より常勤にて現職就任

今回と次回の二回に分けて、100歳時代を迎えた今、IFAというプロフェッショナルとしての生き方を皆さまと共に考えてみたいと思います。

私はひとりのプロフェッショナルとして、好奇心に任せ学びを広げ、深め続け、それがやがて仕事につながり、ついには最も楽しい人生の活動になる生き方を目指しています。IFAはそうした幸せなキャリアを通じ、生涯現役で活躍できる可能性を秘めた仕事だと信じています。

超長寿社会を迎え、キャリアや老後の生活まで企業に全面的に依存する父親世代のような企業依存型の人生は今や立ち行かなくなっています。限られた退職金と老後年金では老後資金も先細りし、旧来型の職縁を中心とした会社人生では、退職後に働こうにも新たな学びや人間関係の広がりもなく、社会の中で自分を生かして働く選択肢が限られてしまうからです。

超長寿社会という新しい現実の下では、一つの企業が一人の人生を丸抱えで保障することが困難な時代に入っているのです。

むしろこの新しい現実を受け入れ、次の2つの理由から新たな働き方と生き方に備えていくことを個人の責任として主体的に引き受け、いち早く行動に移していくべきでしょう。

第1に、人生の3大財務問題である教育・住宅・老後資金の問題が、定年まで働くだけでは今や必ずしも解決できない時代に入ったこと。第2に、年齢が進めば進むほど、私たちの能力面での個体格差は広がり、個人の価値観もより一層多様化してくるため、国や企業が提供する画一的な支援の仕組みが急速に魅力を失うこと。こうした国や企業による従来型の働く個人の支援の仕組みは、財務上から制度継続が限界となり、また個人の多様なライフスタイルとの適合性から見ても、急速にその満足度が失われています。
そこで、こうした新しい現実に対応するためにも、100歳時代に向けた新たな生き方が今求められているのです。

時間はすべての人に平等に与えられた資産です。
しかし、それをどのように活用するかで個々人の幸せも大きく変わっていきます。
誰しも本来は、高い志を持って社会に価値を提供し、自己尊厳を感じるライフスタイルを確立したいと願っているはずです。

すでに欧米では、こうした新しい現実を受け入れ、一定の年齢以降は、組織を離れて個人の能力、経験、人脈をリセットし、新たに独立した個人として働く生き方が関心を集めています。米国の著名な評論家ダニエル・ピンクは、2002年「フリーエージェント社会の到来」という著書で、こうした新たな働き方をフリーエージェントと呼び、その特徴を明らかににしています。
15年以上前に書かれた著作ですが、今日の日本にはまさにタイムリーな内容です。最近改訂版も出ていますので、本コラムの読者には一読を勧めます。

報酬とライフスタイルコスト(固定性の生活費)の間には密接な関係があります。ライフスタイルコスト以下の報酬では誰も働きたくありません。またライフスタイルコストを稼ぐためには、仕事はなりふり構わずお金を稼ぐことを先行させる必要さえ生じます。私が固定制の生活費を上げないように日頃気をつけているのも、お金のためだけに働かない精神的自由を守りたいからです。
しかし、収入が一旦ライフスタイルコストを上回ると、仕事は単にお金を儲ける手段から性質を一変させます。仕事のもたらすお金の限界効用が逓減し始めるからです。お金の為に働かないフリーエージェントの本来の魅力を最も価値ある形で実現するには、まず自分が納得できる良い仕事を積み重ね、その傍らでライフスタイルコストを抑制する規律を忘れず、結果として、現状の報酬でライフスタイルコスト以上を稼ぐ仕組みを構築する必要があります。

一方IFAは、その定義からフリーエージェントとなります。私はフリーエージェントで働くことの特徴と魅力について、以下のように整理し自覚的に働いています。

①組織の目線ではなく、自己の価値観に従って仕事ができる
②好きな時、好きな場所で、好きな時間だけ、好きな条件で、好きな相手と仕事ができる
③プロジェクト単位で働くことが多く、多様な人間と多様な経験に身を置くことで創造性や能力を高めることができる
④後述の「weak ties(弱い絆)」で結ばれている仕事上の仲間との間でこうしたプロジェクトを繰り返し、信頼関係を深める人的ネットワークを強化できる
⑤雇用労働者が自らの知識、経験、人脈を企業に投資するのに対して、フリーエージェントは、個人のプロフェッショナルとしての能力を資本投下し、社会課題へのソリューションを起業家として提供する

フリーエージェントであるIFAの働き方には、雇用労働者にはない次の三つの魅力があります。

1. 顧客選択の自由
2. 労働時間の自由
3. 退職時期の自由

しかし、それら三つの自由の行使には一定の制約条件があります。
次回は、こうした制約条件に加え、本稿の残りの主要な論点である、Life Shiftの著者リンダ・グラットンが「自らを変革し続けるために重要」と提唱している無形資産について、IFAとして活躍を目指す皆さまの視点で考えてみたいと思います。

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