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IFA業界事情

米国投信ビジネス2000兆円の深層

(第16回)
監督機能を出発点に事業領域を広げ 
独立系アドバイザーを支援する「スーパーOSJ」

画像:沼田 優子 氏
明治大学 国際日本学部
特任准教授
沼田 優子 氏

東京大学経済学部卒業後、野村総合研究所入社。NRIアメリカ、野村資本市場研究所にて、日米の金融機関経営、資本市場動向等の研究業務に従事。野村證券を経て、2012年より現職。

本稿では、米国独立系アドバイザーの興隆を繰り返し報告してきた。しかし、大手金融機関勤務のトップ営業担当者が独立に二の足を踏む要素には、依然として事欠かない。

なぜなら、独立系アドバイザーのチャネルが証券営業担当者の中では一大勢力となっても、各アドバイザーの大半は小規模なままで、交渉の場等では見劣りすることも少なくないからである。また、正社員時代は営業に注力できても、独立系アドバイザーとなれば自社の経営もおろそかにできない。コンプライアンス等の事務処理作業もついて回る。

もちろん、運用業者や証券業者から支援は受けられる。それでも自ら取り組まなければならない膨大な業務に忙殺され、顧客と向き合う時間が減ったという悩みを持つ独立系アドバイザーは少なくない。

そこで米国では、運用・証券業者の支援と独立系アドバイザーの業務の間を埋める専門業者が台頭してきた。彼らは有料で独立系アドバイザーの業務の一部を請け負い、分業体制を構築して、独立系アドバイザーのエコシステム(生態系)を作り上げている。今回はそうした専門業者のうち、OSJについて取り上げたい。

支援機能をも担うOSJ「ファシリテーター」

OSJは、Office of Supervisory Jurisdictionの略で、証券外務員の監督者のいる場所を指す。米国では通常、監督の役割も支店長が担うが、それは支店がOSJに定められているからである。この監督者は、証券外務員の監督資格と、相応の経験を有する者が務めなければならないとされている。

ただし、独立系アドバイザーを多数抱える証券業者では、一人店舗や営業担当者の住居等でも営業行為が行われている。このような場合、通常は近隣のOSJが独立系アドバイザーの監督者として指定される。OSJは営業担当者との面談や、営業所の訪問を定期的に行わなければならない。

このように、独立系アドバイザーと証券業者を規制・コンプライアンス面からつなぐのがもともとのOSJの役割であり、その業務の詳細についてはFINRA(金融取引業規制機構)規則3110条で定められている。この役割のみを忠実に果たすOSJは、「伝統的OSJ」と呼ばれている(図表1、2)。

しかし、コンプライアンスに必要な情報を握るOSJは、営業担当者の行動も掌握している。これらを見れば、優秀な営業担当者に共通する行動や、他と比べた特定の営業担当者の業績・効率性・改善点等も見えてくる。

そこでOSJの中には、規制・監督面における定常業務からさらに一歩踏み込み、証券業者の提供する支援策を独立系アドバイザーが導入しやすいよう手助けをするところが出始めた。こうしたOSJは「ファシリテーター」と呼ばれている。

ファシリテーターが必要になったのは、最近の証券業者の支援策が多岐にわたるからでもある。従来、支援策は営業促進策にとどまり、証券業者の注文執行システムを中心に、商品・サービス情報やリサーチ、研修・セミナー、広報活動を加える程度であった。

しかし現在は、それらに加えて独立系アドバイザー法人そのものの経営指南やコンプライアンス支援、営業効率を上げるためのさまざまなテクノロジー等も提供するようになっている。

基本的に独立系アドバイザーは、さまざまな経歴の者が併存しているため、必要な支援の度合いも大いに異なる。そこで証券業者としては、独立系アドバイザーがなるべく前職と同じような環境で営業ができるよう、複数のメニューを用意して、彼らが取捨選択できるようにしている。

しかし一方で、こうした体制は支援策の導入検討・比較・活用方法の理解・試運転、といった時間が取りにくい小規模な独立系アドバイザーを苦しめることにもなっていた。ファシリテーターはこのような悩みを解決しようというのである。

さらに、あくまでも証券業者の提供する支援策の使い勝手を良くすることに主眼を置くファシリテーターに対し、証券業者を超える支援を独自に開発・提供し、これをビジネス化しようという動きも出てきた。こうした行動を取るOSJは、「スーパーOSJ」と呼ばれている。

図表1
図表2

支援に加え組織力をも備える「スーパーOSJ」

OSJが例えば独自でシステム開発も行うとなると、それなりの資本も当然必要となるし、採算を合わせるためには規模の経済を働かさなければならない。そこでこうしたスーパーOSJは、引退する独立系アドバイザーの顧客を引き取ったり、目をつけた独立系アドバイザーを買収したり引き抜いたりして、積極的な規模拡大も目指す。もちろん、第三者の独立系アドバイザーが使用料を支払い、システムのみを利用することもある。

ただ、スーパーOSJともなると、そのゆるい連合体の一員となってブランドを使えるようになるだけでも、独立系アドバイザーは運用・証券業者に対する交渉力を増すことができる。また、スーパーOSJでは現役の独立系アドバイザーが支援策を実際に活用し、フィードバックを提供しながら改善策を練っていくため、独立系アドバイザーにとっては、かゆい所に手が届くような支援策に仕上がる場合が少なくない。従って、OSJにその対価を支払っても惜しくはない、と考える独立系アドバイザーも少なくはないのである。

こうして成長したスーパーOSJの中には、独立系アドバイザー数百人を組織し、OSJごと注文を執行する証券業者を変更したり、自ら証券業者へと業態転換したりするほどの力をつけたところもある。

***

翻ってわが国に目を転じると、金融商品仲介業者(IFA)を支援する専門業者の存在はまだ限定的である。しかしその一方で、IFAの法人化や拡大の動きは一部で顕著になりつつあり、IFA法人によっては100名以上の組織に成長しているところもある。

米国の事例にならえば、IFAの孤軍奮闘には限界がある。制度面での違いが大きいとはいえ、今後はわが国でもスーパーOSJのような支援専門組織を育てていくことが、発展を支える近道となるのかもしれない。

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