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新NISAはデメリットしかない?従来の制度との違いや運用のコツを解説
2024年から旧NISA制度に代わり新NISA制度が始まりました。注目度は高く、メディアや金融機関で盛んに取り上げられている一方で、デメリットが多いという噂もあります。
新NISAに関するニュースはメリットを伝えるものが多く、本当にデメリットがあるのかを知りたい人は、なかなか情報にたどり着けず不便を感じているでしょう。
本記事では新NISAのデメリットや注意点を解説します。また、従来の制度との違いや新NISAになって改悪されたポイントとともに、新NISAの運用のコツも併せて紹介します。
目次
いつからスタート?新NISAとは?
新NISAは2024年に開始した新しい非課税投資制度です。旧制度が2023年に終了し、新制度として生まれ変わりました。そもそもNISA(日本版ISA)という愛称は、モデルとなったイギリスのISA(個人貯蓄口座)制度に由来します。
NISAでは株式と投資信託を非課税で運用できます。株式と投資信託は、本来は利益に約2割の税率がかけられる商品です。しかしNISAを通じて購入した場合、税金は生じません。なお、NISAで株式に投資するには証券会社で口座を開設する必要があります(銀行は投資信託のみ)。
2023年までの旧NISAは「一般NISA」と「つみたてNISA」に分かれていました。新NISAはこれを一本化し、併用できるようになっています。
新NISAは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2つの枠があります。成長投資枠は一般NISAを引き継いだもので、株式や投資信託を購入できます。つみたて投資枠はつみたてNISAを承継したもので、金融庁の基準を満たした一定の投資信託を購入できます。
投資できる金額は、成長投資枠で年間240万円、つみたて投資枠で120万円です。2つの枠を併用すると最大で年間360万円まで投資できます。
ただし非課税保有限度額(累計で投資できる金額の上限)は、2つの枠を合わせて1800万円までです。非課税保有限度額に到達したら、新たな投資はできません。
2つの枠それぞれの累計投資可能額は、成長投資枠が1200万円、つみたて投資枠で1800万円です。つまり、つみたて投資枠は単体で非課税保有限度額を使い切ることができます。しかし成長投資枠だけでは1200万円までしか投資できません。
成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
---|---|---|
口座開設期間 | 無期限 | 無期限 |
非課税期間 | 無期限 | 無期限 |
対象商品 | 株式、投資信託※1 | 投資信託※2 |
年間投資可能額 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有限度額 | 1200万円※3 | 1800万円※3 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
- ※1…株式は監理・整理銘柄を除く。投資信託は信託期間20年未満、毎月分配型、デリバティブ型(ヘッジ以外)を除く。
- ※2…金融庁の基準を満たした長期の積み立て・分散投資に適した銘柄に限る
- ※3…2つの枠を合わせて1800万円まで
出所:金融庁 NISAを知る
どっちがいい?従来のNISAと新NISAの違いとは
上述の通り、NISAは2024年に新しく生まれ変わりました。基本的に、従来の制度より新NISAの方が充実した内容となっています。
大きな変更点は3つあります。口座開設期間の恒久化と非課税期間の無期限化、投資可能額の引き上げです。
旧NISAは期間限定の制度でした。口座を開設できる期間は一般NISAで2028年、つみたてNISAで2042年と定められていました。新NISAでは口座開設期間が撤廃され、いつでも利用できる恒久的な制度となっています。
非課税期間の無期限化は、非課税で運用できる期限を撤廃したものです。旧NISAの非課税期間は一般NISAで最長5年、つみたてNISAで最長20年でした。一方、新NISAの非課税期間に期限はありません。一度購入した商品は、売却するまでいつまでも非課税で運用できます。
投資可能額も引き上げられました。旧NISAの投資可能額は一般NISAで年間120万円、つみたてNISAで年間40万円でした。新NISAでは年に最大で360万円(成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)まで投資できます。
旧NISA(~2023年) | 新NISA(2024年~) | |||
---|---|---|---|---|
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
制度の併用 | × | 〇 | ||
口座開設期間 | 2028年まで※1 | 2042年まで※1 | 無期限 | |
非課税期間 | 最長5年 | 最長20年 | 無期限 | |
非課税の対象 | 譲渡益、配当金(分配金) | 譲渡益、配当金(分配金) | ||
対象商品 | 株式、投資信託 | 投資信託※2 | 株式、投資信託※3 | 投資信託※2 |
年間投資可能額 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有限度額 | 600万円※4 | 800万円※4 | 1200万円※5 | 1800万円※5 |
- ※1…新NISA開始に伴い2023年で終了
- ※2…金融庁の基準を満たした長期の積み立て・分散投資に適した銘柄に限る
- ※3…株式は監理・整理銘柄を除く。投資信託は信託期間20年未満、毎月分配型、デリバティブ型(ヘッジ以外)を除く。
- ※4…年間投資可能額×非課税期間の値
- ※5…2つの枠を合わせて1800万円まで
以下で旧NISAと新NISAの違いを項目別に紹介します。
制度の併用
新NISAでは制度の併用が可能となりました。一般NISAを承継した成長投資枠と、つみたてNISAを承継したつみたて投資枠の双方を同時に利用できます。
旧NISAは選択制でした。一般NISAとつみたてNISAのいずれかを選択して利用する必要がありました。
制度の併用が可能となったことで資産運用の選択肢が広がり、投資可能額も拡大しました。
口座開設の期間
口座開設期間は新NISAで撤廃されました。18歳に達したら、いつでも口座を開設できます(口座を開設できるのは1月1日時点で18歳以上の年)。
従来は口座を開設できるのは2042年まででした。2042年時点で未成年の人はNISAを利用できないこととなっていました。またNISA制度が始まった2014年時点で未成年だった人は、そうでない人より非課税投資額が減ってしまう仕組みとなっていました。このように、従来は世代間でNISAの利用に格差が生じていました。
新NISAは恒久的な制度となりました。現在未成年の人も、18歳に達すれば順次口座を開設でき、非課税保有限度額(1800万円)まで投資できます。
非課税の対象
非課税の対象に変更はありません。新旧どちらの制度も、譲渡益と配当金(分配金)の双方が非課税となります。配当金は株式の発行体が利益の一部を投資家に還元するもの、分配金は投資信託が収益の一部を投資家に還元するものです。
投資対象の商品
投資対象の商品は、おおむね維持されました。従来の一般NISAとつみたてNISAの対象商品は、それぞれ成長投資枠とつみたて投資枠に引き継がれています。
ただし一般NISAの対象商品の一部は、成長投資枠を含め新NISAでは購入できないこととなりました。
【新NISAで対象外となった商品】
- 監理銘柄または整理銘柄に指定された株式
- 信託期間が20年未満の投資信託
- 毎月分配型の投資信託
- デリバティブ取引を用いる投資信託(ヘッジ目的を除く)
- ※監理銘柄:上場廃止の可能性がある株式
- ※整理銘柄:上場廃止が決まった株式
年間投資可能額
新NISAの年間投資可能額は360万円です。成長投資枠は年に240万円まで投資でき、つみたて投資枠は年に120万円まで投資できます。2つの枠を併用すると、年間360万円まで投資できます。
従来のNISAの年間投資可能額は一般NISAで120万円、つみたてNISAで40万円でした。制度の併用はできませんでした。したがって、年間投資額を最大化するには一般NISAを選ぶ必要がありました。
非課税保有限度額
新NISAの非課税保有限度額(累計で投資できる金額の上限)は1800万円です。これは成長投資枠とつみたて投資枠の合算で管理されます。つみたて投資枠のみで1800万円を使い切ることも可能です。しかし成長投資枠だけでは1200万円までしか投資できません。
非課税保有限度額は売却すると復活します。復活する金額は取得額です。売却額ではありません。例えば100万円で購入した商品を120万円で売却したとき、再利用できるのは100万円です。
非課税保有限度額は新NISAで新設された仕組みです。従来のNISAには非課税保有限度額に相当する仕組みがありません。
なお、従来のNISAの非課税保有限度額に相当する金額を非課税保有期間×年間投資可能額から求めると、一般NISAで600万円(120万円×5年)、つみたてNISAで800万円(40万円×20年)となります。
非課税になる保有期間
新NISAの非課税期間は無期限です。購入した商品は、売却するまで非課税で運用できます。
従来のNISAの非課税期間は一般NISAで最長5年、つみたてNISAで最長20年でした。非課税期間が終了した商品は課税口座に払い出され、以降の利益は課税される仕組みとなっていました。
改悪された?新NISAのデメリットをわかりやすく解説
新NISAに改悪された部分はないのでしょうか。
2023年までの旧制度にはなく、2024年からのNISAで懸念されるデメリットや注意点は以下の通りです。
【2024年からのNISAのデメリット・注意点】
- 投資できる銘柄が減った
- ロールオーバーできない
- 短期的な運用になりやすい
- 投資対象の選定が適当になりやすい
- 未成年だと口座開設できない
また、旧制度から続くNISAのデメリットや注意点は以下のようなものがあります。
【従来のNISAからのデメリット・注意点】
- 損益通算できない
- 元本割れのリスクがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
投資できる銘柄が減った
新NISAは旧制度より投資できる商品が減少しました。新NISAで改悪されたポイントともいえるでしょう。
従来の一般NISAは、株式や投資信託なら幅広い銘柄に投資できました。しかし一般NISAを承継した新NISAの成長投資枠は、一定の銘柄を対象外としています。なおつみたて投資枠の投資対象商品は、旧つみたてNISAと同様です。
旧NISA (一般NISA) |
新NISA (成長投資枠) |
||
---|---|---|---|
投資信託 | 信託期間20年未満 | 〇 | ― |
毎月分配型 | 〇 | ― | |
デリバティブ型(ヘッジ目的除く) | 〇 | ― | |
上記以外 | 〇 | 〇(※) | |
株式 | 監理銘柄 | 〇 | ― |
整理銘柄 | 〇 | ― | |
上記以外 | 〇 | 〇 |
- ※投資信託協会に届け出られた銘柄に限る
ロールオーバーができない
ロールオーバーができないことも、2024年になって生じたNISAの注意点です。
ロールオーバーとは非課税期間を延長する手続きです。従来の一般NISAでは、非課税期間が終了する商品を翌年度の枠へ移し、非課税期間を延長できました。これをロールオーバーと呼びます。
ロールオーバーは、従来は2024年以降もできる計画でした。実はNISAは2024年に2階建ての制度になる予定で、この2階建てNISAでは従来の一般NISAからのロールオーバーが認められていました(出所:金融庁 令和2年度税制改正について)。
しかし、結局2階建てNISAは実現しませんでした。代わりに実施された現在の新NISAでは、一般NISAからのロールオーバーはできません。
もっとも、新NISAでは非課税期間の期限が撤廃されています。特別な手続きをせずに無期限に非課税で運用できるため、ロールオーバーの必要性はなくなっています。
短期的な運用になりやすい
短期的な運用になりやすい点も、新NISAで懸念されるところです。
新NISAでは投資枠の再利用ができるようになりました。購入した商品を売却すると、その商品の購入額の分だけ投資枠が復活します。復活する投資枠は、売却の翌年度に割り当てられます。
投資枠の再利用は新NISAで新設された仕組みです。従来のNISAは枠の再利用はできませんでした。一度消費した投資枠は、商品を売却しても復活しないことと定められていました。
投資枠の再利用が新設されたことで、短期的な売買が可能となりました。投資枠の復活を利用すれば、1年周期で売買を繰り返すことができます。年末に売却すれば、翌年の投資枠を使って最短で翌営業日に買い直すことも可能です。
旧制度より短期的な運用になりやすいことは、新NISAの注意点の一つです。
投資対象の選定が適当になりやすい
銘柄の選定が甘くなりやすい点も、新NISAの注意点といえるでしょう。
上述の通り、新NISAでは投資枠の再利用が可能です。購入した商品を売却すれば枠が再び割り当てられるため、銘柄を選び直すことができます。
あとで銘柄を選び直せることは、銘柄の選定がずさんになりやすいともいえます。従来のNISAでは銘柄を厳しく選定していた人も、新NISAでは甘い基準で投資対象を選ぶことが懸念されます。
未成年者だと口座を開設できない
未成年者が利用できなくなったことも、2024年からのNISAの注意点です。
2024年から未成年者はNISAを開設できないこととなりました。従来は未成年者が開設できる「ジュニアNISA」という制度がありました。
しかしジュニアNISAは2023年で終了しました。新NISAに未成年者が利用できる仕組みはありません。新NISAを利用できるのは、1月1日時点で18歳以上の人に限られます。例えば2024年1月2日以降に初めて18歳になった人は、2025年以降にNISAを開設可能です。
もっとも、ジュニアNISAの廃止は既定路線でした。もともと2023年までの制度で、令和2年度(2020年度)税制改正でも延長しないことが決まっていました (出所:金融庁 令和2年度税制改正について)。
以上から考えると、未成年者がNISAを利用できなくなったことは、新NISAで改悪されたとはいえないでしょう。
損益通算できない
NISAのデメリットで最も注意したいことは、損益通算できないことです。損益通算できないことは従来のNISAでも同様でした。
損益通算は、損失と利益を相殺し税金を減らす手続きです。例えば20万円の利益を出すと税金がおよそ4万円かかります。しかし別の取引で5万円の損失を出しているなら、損益通算で税制上の利益は15万円となり、税金は3万円へ減少します。
損益通算は、いわば損を出したときの救済措置といえるでしょう。
しかしNISAの損失は損益通算ができません。NISA口座上の損益は、税制上なかったこととなります。利益に課税されない一方、損失を出しても損益通算の対象となりません。
したがって、取引上の損益が同じでも、損失がNISA口座で生じているなら税制上で不利な取り扱いとなる場合があります。
出所:著者作成
元本割れのリスクがある
元本割れのリスクがあることも、NISAで気を付けたいデメリットです。新NISAに限らず、従来のNISAや課税口座での取引も同様です。
NISAで投資できる商品に元本保証はありません。NISAで投資できる商品とは、株式や投資信託です。株式や投資信託は値動きがあり、評価額や売却額が購入額を下回る可能性があります。
特に成長投資枠は値動きの大きい商品にも投資できるため注意が必要です。個別株式は一般に投資信託よりも大きな値動きとなります。また投資信託も、少数の株式に集中投資する銘柄や、特定の新興国株式だけに投資する銘柄などは、比較的大きな値動きが生じます。
NISA口座での損失は、上述の通り損益通算ができません。課税口座の損失より不利になりやすいため注意しましょう。
従来のNISAにはない、新NISAならではのメリット
2024年からのNISAには、たしかに旧制度にないデメリットや注意点があります。
しかし、基本的には新NISAは以前より制度が大きく拡充されています。従来のNISAにない、新NISAならではのメリットには以下のようなものがあります。
【新NISAで】
- 長期運用できる
- 売却後に非課税枠を再利用できる
- 枠を併用できる
長期運用できる
旧制度になく新NISAならではのメリットとして、非課税でより長期の運用ができるようになったことが挙げられます。
従来のNISAの非課税期間は最長で20年でした。つみたてNISAを選んだ場合がそうで、購入した年を含め20年間非課税で運用できました。一方、一般NISAの非課税期間は最長で5年間でした。
新NISAに非課税期間の期限はありません。成長投資枠とつみたて投資枠のどちらも非課税期間は無期限です。30年や40年といった、より長期の非課税運用が可能となっています。
売却後に非課税枠を再利用できる
非課税投資枠を再利用できるようになったのも、新NISAならではのメリットです。
先述の通り、新NISAでは投資枠が再利用できるようになりました。購入した商品を売却すると、その取得額の分だけ投資枠が復活します。1800万円の非課税保有限度額へ到達したとも、売却すれば新たな投資が可能です。
投資枠の再利用が新設されたことで、新NISAは積み立てと取り崩しが可能となりました。これを利用すれば、ライフステージごとにかかる出費をNISAで柔軟に準備することが可能です。例えば住宅資金を取り崩したあと、復活した投資枠で新たに老後資金を積み立てるといった使い方ができます。
枠を併用できる
2つの枠を併用が可能となったことも、新NISAで新たに生まれたメリットです。従来は制度の併用ができませんでした。
旧制度の2つのNISAには一長一短がありました。一般NISAはさまざまな商品に投資できますが非課税期間が短く、つみたてNISAは非課税期間が長いものの投資対象商品が限定されていました。両者を併用できなかった旧制度では、いずれかのメリットを諦めたりデメリットを受け入れたりする必要がありました。
新NISAでは、一般NISAとつみたてNISAに相当する2つの枠(成長投資枠とつみたて投資枠)を併用できます。また無理に併用する必要もなく、いずれかの枠のみ利用する選択肢もあります(成長投資枠のみだと非課税保有限度額を使い切れない点には注意)。
2つの枠の併用が認められたことで、従来のNISAよりも使い勝手がよくなったことは、新NISAで大きく改善されたポイントです。
新NISAを賢く活用するためのコツ・注意点を解説
これまで新NISAのメリット、デメリットについて紹介しました。
ここからは、新NISAをうまく活用するためのコツや注意点を押さえましょう。
事前に運用の目的を設定する
新NISAをうまく活用するためには、まず運用の目的を設定することが大切です。
新NISAは非課税期間が無期限化され、投資可能額も引き上げられています。また枠の再利用も可能となりました。新NISAは旧制度より自由な運用ができるようになっています。
自由度が増した一方、新NISAは放漫な運用となりやすい危険性もはらんでいます。そこで、計画的な運用のために目的の設定が大切となってきます。
目的があると資産形成の方向性が見えやすくなります。目的を定めると、その実現に必要な金額や時期を推定できます。必要な金額や時期がわかれば、どのような商品にいくら投資すべきか逆算できます。
大きく制度が拡充された新NISAは、将来の資金準備に深く関わりやすいと考えられます。まずは目的を定め、計画的に運用に臨むようにしましょう。
枠の配分を考えて運用する
枠の配分の検討も大切です。枠の配分とは、成長投資枠とつみたて投資枠の利用割合のことです。どちらの枠に、どれくらい投資するのか事前に考えておきましょう。
新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠を併用できます。ただし、それぞれ年間投資可能額と非課税保有限度額が異なります。運用の目的に合わせ、どのような配分で投資するか決めておきましょう。
例えば資金をできるだけ早く運用に回したいなら(1)成長投資枠へ年間投資枠がある限り一括投資(2)成長投資枠の年間投資枠が尽きるならつみたて投資枠も併用、といった配分が考えられます。2つの枠で年間投資枠の上限まで投資すると、5年間で非課税保有限度額の1800万円を使い切ることができます(成長投資枠1200万円、つみたて投資枠600万円)。
情報収集に力を入れる
資産運用に関する情報を集めておくことも大切です。
新NISAでは投資枠の再利用が可能です。したがって、銘柄を後で買い直すことができます。
むやみな買い直しはおすすめしません。しかし投資した商品が想定と異なる値動きとなったり、後から運用コストが安い商品が出てきたりすることが考えられます。また目標額の到達後に、より小さいリスクでの運用へ切り替る選択肢もあるでしょう。このような場面に直面したとき、銘柄の入れ替えは有効な手立てとなり得ます。
収集すべき情報として、保有する商品の値動きはチェックしておきたいところです。また投資信託の新商品の情報も集めておけば、よりコストの安い銘柄に気付きやすくなります。
情報の収集は少しずつでも構いません。定期的に情報を集め、投資に関する知識を定着させましょう。
無理のない運用を意識する
無理のない範囲で投資することも、新NISAで大切な考えです。
新NISAは税金がかからないため、たしかに通常の課税口座より有利な運用が期待できます。しかし、余裕資金を超えて投資することは危険です。家計がひっぱくし、現在の生活が苦しくなることが懸念されます。
新NISAは、あくまでも生活を豊かにする手段の一つに過ぎません。将来を考えるあまり、現在の生活が苦しい状態になっては本末転倒です。
また、新NISAでは年間投資枠を使い切る必要性は薄れています。
非課税保有限度額がなかった旧制度では、非課税投資を最大化させるには年間投資枠を毎年使い切る必要がありました。しかし新NISAでは、累計で投資できる金額は非課税保有限度額で管理されます。消化した年間投資枠の大小にかかわらず、累計で1800万円まで投資できます。
新NISAの活用は、自分の家計と相談し無理のないペースで行うようにしましょう。
自分に合った商品を選択する
自分に合った商品を選択することも、新NISAでは大切です。新NISAで選ぶべき商品は、自身のリスク許容度や投資の目的などがヒントとなります。
例えばリスク許容度が高いなら、個別株式や株式型ファンドなどが選択肢になってきます。しかし大きな値下がりを許容できないなら、債券型ファンドや債券の割合が大きいバランス型ファンドなどが選択肢となるでしょう。
投資の目的も銘柄選びの基準の一つです。例えば老後資金の準備のため比較的長い運用期間が取れるなら、一般にリスクの高い商品を選ぶ余地が生まれます。反対に子の教育資金といった比較的近い将来に使う資金を準備する場合、ハイリスクな商品は適切とはいえません。
2024年以降、従来のNISAはどうなる?移管できるの?
最後に、新NISAの開始が従来のNISAに与える影響について確認しておきましょう。
旧NISAは、新NISAが始まった2024年以降は新たな投資ができないこととなりました。新しい非課税投資は新NISAを活用する必要があります。
なお、新NISAの非課税保有限度額は旧NISAと別枠です。旧NISAでどれだけ投資していても、新NISAでは累計で1800万円まで投資できます。
2023年までの旧NISAで購入した商品は、2024年以降も引き続き従来の非課税期間が適用されます。例えば2023年に一般NISAで購入した商品は2027年まで非課税です。また2023年につみたてNISAで購入した商品は2042年まで税金がかかりません。このようなケースでは、旧NISAと新NISAの双方の口座を保有することになります。
2023年までの旧NISAで購入した商品は、前述のとおりロールオーバーはできません。非課税期間が終了した場合、課税口座へ払い出されます。新NISAへ移すことはできないため注意しましょう。
まとめ
- 新NISAは従来の制度から変化しました。対象商品が減ったことは改悪されたポイントといえるかもしれません
- しかし、総合的に見れば新NISAは旧制度より拡充された内容となっています。制度の恒久化や非課税期間の無期限化、投資可能額の拡大は、NISA制度を大きく充実させたと評価できるでしょう。投資枠の再利用や制度の併用が取り入れられたことから、投資の自由度も向上しています
- ただし従来からあるデメリットの一部は新NISAにも残っています。損益通算できないこと、元本割れのリスクがあることなどが該当します。また投資の自由度が増したことは、商品の選別が難しくなったともいえます
- これらのデメリットへの対策の一つが専門家への相談です。注意点の指摘や銘柄選定のアドバイスなど、サポートを受けながら資産運用に臨むことができます
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